2013年3月16日土曜日

私が「白熱教室」で学んだこと



マイケル・サンデル教授の白熱教室ブームに乗ったタイトルではあるけれど、留学前の私にとっては授業や勉強のポイントなど具体的にイメージできて結構参考になった。

p34
「彼女のように、準備ができていなくても受け入れなくてはならないようなことは、きっとみんなの人生でもこれから起こるだろう。でも、将来はエンジニアリングのように計画してつくり出せるものではない。そんなときは、人生は一つの長い学習の道だと思えばいい。いま目の前で起こっている変化を受け入れたときに、私はどれだけ、理想の自分に近づくための学習ができるだろうか、という質問を自分に投げかければいい
「その学習の道を歩むためにも、サポートしてくれる人を見つけること。そして、その人たちのために、そのサポートをあたため育てるために、自分は何をすべきかを忘れないこと」
自分がどんなフェーズ(段階)にいて何を経験していようとも、つねに謙虚かつ自信ある自分でいるために、正直に向かい合える人を見つけることが大切だと、教授は説きました。
つまり、ここにあるのは、もはや理論を超えたもの。世の中では予測不可能なことが唐突に起きる。それらの出来事に対処していくためには、謙虚さや自分への信頼感、そして「愛」が重要だと“学校の授業”で説いているわけです。
それが世界に誇る、ハーバード・ビジネススクールの「リーダーシップ」の授業でということは、特筆されるべきことだと思います。

P38
私が在籍していた当時、アメリカで経営学を学ぶ人間なら誰もが憧れる存在、GEの元CEO、ジャック・ウェルチ氏が講義をしてくれたことがありました。そのときに心に残ったメッセージは次のようなものです。(中略)
Never modify yourself to play a game in a corporation.
Never sell out yourself.
Don't let yourself lose your soul.
Authenticity is everything.
(自分らしさを失うということは、魂を失うことと同じ。自分らしくいられない会社で時間を無駄にするな。会社にフィットするために、自分を裏切るな。真の自分であることが何よりも大切なのだ)
ここにあるのは、経営学のハウツーではなく、まさに「哲学」そのものです。

p42
つねに考えさせてくれたのは「目的意識とプロフェッショナリズムをもった生き方を」というテーマでした。
どういうことかといえば、よく教授が言っていたのはこんな話です。
「お金や役職などは、簡単に奪われてしまう。そういうものを追い求めると、今回のような不況になったとき(ちょうどリーマン・ブラザーズが倒産した時期でした)、自分を見失ってしまう。そうではなくて、どんなときも決して誰にも奪われないものを探し、見つけて、育てていってほしい
金銭や地位を自分にとっての基準にすると、状況が変わったときに一瞬にすべてが奪われてしまいます。でも、自分がやりたいこと、成し遂げたいこと、変えてみたい世界、そういったゴールを掲げて行動していけば、日常の変化に大きく打撃を受けることなく、自分を見失わない―。
教授はよく不正会計などの問題をとり上げ、幸福な人間として人生を送るために「目的意識とプロフェッショナリズム」をもつべき、といったことをテーマにしました。その「プロフェッショナル」の部分に、会計という専門的な要素が入ってくるわけです。
この発想の違い、深さ。ここにアメリカで言われる「勉強」の本質があるのです。
私が本書で提示したいのも、まさにそうした「生き方を決める勉強」です。迷ったときに自分がどうすべきか、どう対処すべきかを決める本質的な勉強の必要性なのです。

p47
私が考えた自分の成功の定義は、こういうものでした。
To succeed means to be fully self-aware, not being influenced by others, and be able to pursue my original way of life in order to make a positive change in someone’s life through work, family, and community involvement.
「私にとっての成功とは、自分をよく理解し、他者に影響を受けることなく自分らしいオリジナルの人生を追究し、仕事や家庭、社会への関与により誰かの生活をよりよくする変化を起こすこと」

p61
「他者からどう見られているか」という点に関して言うと、アメリカの学校に入ると、日本人は必ずほかの国の子から日本について質問されます。
それも、高校から大学、さらに大学院とレベルが上がるにつれて、「より難しいこと」を聞かれるようになっていくのです。だから自国の歴史や文学を熱心に勉強しないと、アメリカではやっていけないところがあります。
もちろん授業でも、日本のことがテーマになると、真っ先に私のような日本人留学生は、教授からの指名を受けます。 たとえばハーバード・ビジネススクールの一年目に、マクロ経済の授業がありました。そのときに日本の高度経済成長期のケース(事例)を取り上げることが結構あったのです。
日本人がこの授業に臨むときは、あらかじめかなり勉強しておかなくてはなりません。時代背景などを頭に入れ、自分の意見をしっかりつくっておかないと、とんでもないことになってしまいます。

p106
いかに時間を捻出し、ケースを読んで、考える時間をつくるか。
すでにディスカッションの戦いは、普段のタイムマネジメントの段階から始まっているわけです。入学後にどれだけ早く、自分なりのスケジュール管理や、授業を軸に据えた時間攻略法を編み出せるかが、ハーバードで好成績を収めるためのコツになります。

p109
教室の内外で、教授たちといかに信頼関係を築くかが大切になります。
教授の部屋に質問をしに行く。キャリアの相談に行く。教授の専門分野に自分は興味があるのだと示す。授業の前日に、「過去二回、授業で発言していません。次の授業は私が過去に体験したことのあるチームワークの難しさについての話で、ぜひ発言したいのでよろしくお願いします」というようなメールを書く。
そういうやりとりのなかで教授に名前を覚えてもらい、自分が意欲的であることをアピールし、信頼関係を築いていくのです。

p181
ビジネスケースを考え得る授業でも、教授たちはたえず「家族の重要性」を説くのです。前にも、離婚の問題をとり上げたケースを紹介しましたが、ほかにも「家族」をテーマにしたスライドを学生たちに見せて考えさせるような授業をした先生もいました。
つまりハーバード・ビジネススクールという、ある意味、やがて世界でいちばん忙しくなるビジネスパーソンたちを世に送り出す場所で、むしろ仕事に縛られず、自分の人生における幸福感を最重視した選択をするように説いているわけです。
アメリカでは日本以上に、キャリアウーマンが結婚後、あるいは出産後も働き続けられる環境があることも大きいのですが、アメリカでは、エリート層ほど家族をつくり、子どもを育てていくということをきちんと人生目標に据えているのだと思います。
じつはそんな「当たり前」に思えることが、難しいことであると同時に絶対に妥協してはいけない大切なことだからこそ、エリート層の意識が高いのかもしれません。

p191
私自身は、ハーバードで教授たちが口をすっぱくして教えてくれた、「よいパートナーを選ぶことの重要性」が認識できた気がしています。このシリコンバレー移住計画を通して痛感した、私にとってのよいパートナーの定義は、「人生をオリジナルにデザインする柔軟性と創造性があり、行動力が伴っていて、かつ肯定的で明るい人」というものでした。

p229
アメリカの詩人ラルフ・ワルド・エマーソンの「Success(サクセス)」という詩

「成功とは何か」

To laugh often and much. 
(よく笑うこと)

To win the respect of intelligent people and the affection of children.
(知的な人からの尊厳を得て、子どもたちに好かれること)

To earn the appreciation of honest critics and endure the betrayal of false friends.
(よい評論家に認められ、見せかけの友人の裏切りに耐えられること)

To appreciate beauty, to find the best in others.
(美しいものがわかり、他人のよいところを見つけられること)

To leave the world a bit better, whether by a healthy child, a garden patch or a redeemed social condition.
(この世をすこしでもよいものにして去ること。 それが、元気な子どもを育てることや庭を造ることでも、 社会問題を解決することでもよい)

To know even one life has breathed easier because you have lived.
(そして、たった一人でもいいから、私の存在によって 心が安らいだ人がいるということを知ること)

This is to have succeeded.
(それができたら、人生は成功だったと言える)

このように、人生において守るべきものと目指すべきものをしっかりと築き上げ、限りなく自分自身を前進し続けるものこそ、本当の「勉強」なのだと思います。

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